「本音だけ語って生きていきたい」という人はよくいますし、
私もそういうタイプの一人です。
だから気持ちはよくわかりますが、結論からいうと
それは不可能です。人と本当に深いところで付き合おうと
思ったら、実は絶対に話せない本音というのがいくつか
出てくるのです。
音声も撮ったので、聞きながらだと、わかりやすいと思います。
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■中日の落合GMが家族にも秘密にしていたこと
中日ドラゴンズの黄金時代を築いた(そして、今年から
また築く可能性が高い)落合GMですが、現役時代は三度の
三冠王を獲得した唯一の人物です。
そういう野球史に残る強打者だった落合GMですが、その打撃の
特徴は「外角の球をライトスタンドに運べる」ということでした。
普通は内角(体より)の球をそのままそっち側
(右バッターならレフトスタンド)に運ぶものです。
その逆だと力が入らないのでホームランになりにくいんですね。
その逆ができるということで、落合選手は投手から恐れられて
いたのです。
しかし、実はこれは嘘だったんですね。落合選手が流した嘘で、
実は彼もやっぱり、外角の球をホームランにするというのは
難しかったのです。
この噂が流れていたので、たくさん打っているイメージが
ありますが、実はほとんど打っていないそうです。
当の本人がいうのだから間違いありません。
でも、この噂があったせいで、ホームランだけは
打たれたくないという場面になると、相手投手は「内角」に
投げるようにしたのです。
そして、内角は本来ホームランにしやすいので、落合選手の
狙い通り、ホームランが打てたのです。
「外角もダメ。内角もダメとなると、落合には何を投げたら
いいんだ」と投手は思ってしまいます。
これでますます多くの投手が落合選手を苦手とするようになり、
バッターボックスに立った時点で、マインド面ですでに勝負が
決まっている、というような状態になっていたんですね。
■落合は引退するまで、家族にも話さなかった
この嘘は落合選手にとってトップシークレットでした。なので、
引退するまで落合選手はこれを誰にも話していません。
家族にも話さなかったそうです。約20年の年月、多分本当は
人に言いたくて仕方なかったことを、ずっと隠しながら
プレーしていたんですね。
これは技術的な話ですが、もっと別の話で、人に言えないことも
たくさんあるでしょう。たとえば経営者にとって、会社のお金が
どういう風になって従業員の給料が決まっているのかというのは、
正直言えないものです。
経営者や会社に利益が出るような仕組みになっている以上、
全部言うのは忍びがたい部分があるんですね。
多かれ少なかれ、トップに立つ人というのはこういう誰にも
言えない秘密をいろいろ抱えて生きているものなのです。
だからこそ大きな結果が出せるし、だからこそその結果に
よって人と深くつながることができるのです。
なので、本当に人と深くつながろうと思ったら、いつも本音で
生きられるわけではないんですね。
「いつも本音を話していたい」という気持ちはよくわかりますが、
こういう落合GMのような例もあることは意識しておきましょう。