お客さんの気持ちを考えるのが大切などというと、何を
キレイ事をと思われるかも知れません。私も大分昔は
思っていました。

しかし、これがキレイ事でないということは、その逆を
やってみるとわかります。この間友人から聞いた彼の
体験談を紹介します。

新婚夫婦

音声も撮ったので、聞きながらだと、わかりやすいと思います。
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■結婚式の翌朝の新婚夫婦を泣かせてしまった話

友人は昔ホテルのレストランでウェイターをしていました。
そして、ある日、朝食のバイキングのシフトに入りました。
一人女性の先輩と一緒に入っていたのですが、その日、
その先輩がとても不機嫌だったそうです。

それだけだったら特に問題はなかったのですが、その日、
いよいよ朝食が終わるかという時間、新婚の若い
カップルのお客さんが入ってきたそうです。

朝食が終わる時間の前なので何も問題ないですし、
むしろホテルにたくさんのお金を使ってくれた新婚さんに
対してはサービスをするのが当然なのですが、この日、
友人の先輩はまったく逆のことをしていたそうです。

不機嫌がピークに達した彼女は、バイキングの料理
(で片付けを開始していい部分)をガシャンガシャンと
音を立てながら片付け始めたそうです。新婚夫婦にも他の
お客さんにもはっきりと聞こえる音でした。

レストランの中にはかなり気まずい空気が流れ、友人も
「これはヤバイ」と思ったそうです。

ただ、当時の友人は気も弱く、ホテル内での立場も
弱かったため、先輩に注意することもできず、ただ普通に
していることしかできなかったそうです。

そうしているうちに、若い新婚夫婦の女の子の方が
泣き出してしまったそうです。


■もう二度と、お客さんにあんな思いはさせたくない

私が言うのもなんですが、友人は別に人格者ではないですし、
真面目でもありません(本人も日頃から公言しているので
間違いないです)。

ただ、そんな普通の人間である友人にとっても、
やっぱりこの一件はショックだったようです。

友人は新聞などで他人の不幸(特に芸能人の不幸)を見ると
内心嬉しくなってしまう人間だそうですが、それでも
この時ばかりは、「人の不幸なんて見ても絶対楽しくない」と
思ったそうです。

これは友人だけではなく、おそらく誰でもそうです。
こんな現場に出くわして幸せになる人というのは、かなり
脳回路が異常です。

結局新郎さんの方が女の子をなだめながら、友人に
「ありがとうございました」と言いながら、レストランを
後にしたそうです。

友人も本当に申し訳なくなって、かと言って
「申し訳ありません」というのも先輩の手前無理だったので、
「ありがとうございました」という言葉に精一杯気持ちを
込めようとしたそうです。

しかし、そんなのは何の意味もないだろうな、と
思ったそうです。

友人はこの失敗の原因について「日頃から自分がまじめに
接客していなかったから」と言っています。

もし日頃から強い気持ちで接客をしていたら、仕事もできて
ホテル内での立場も強かっただろうし、お客さんを喜ばせる
という強いオーラを持っている人の前では、先輩も
こんなことはできなかったはずです。

友人が日頃から怠惰だったから、先輩もこういう杜撰な
接客を平気でできたのだ、と友人は語っています。

日頃お客さんの気持ちを考えなかったから、こういう
トラウマになるような事件も起きてしまったのです。

以来、友人もできるだけ人の気持ちを考えるようにしている、
と言っています。

人の気持ちを考えるというのがキレイ事でないことは、
こういう逆のケースを体験すると痛感するのだと思います。

言い換えればそういう経験をまだしていない人というのは、
ある意味幸せなのかも知れません。

でも、私は逆の経験をしてキレイ事抜きで人の気持ちを
想像するようになった友人の方が、昔の友人よりも
断然幸せだと思います。