「上下は一日百戦す」という有名な言葉が中国古典にあります。
この記事ではその言葉について解説します。
音声も撮ったので、聞きながらだと、わかりやすいと思います。
⇒ この記事の音声を聞く
■中国の法律の開祖、韓非子の言葉
韓非子という名前は、
世界史で習った記憶がある方も多いでしょう。
中国史で初の法律家で、秦の始皇帝が中国を統一した時に、
初の本格的な法律を制定しました。
もちろん、当時の中国で初ということはアジアでも初です。
日本ではまだ卑弥呼の時代の数百年前です。
(こう考えると、中国の歴史と
日本の歴史の差は恐ろしいですね)
この韓非子は人間不信で有名な人物でした。
彼は人の心を信用しなかったので、
すべてのことを徹底的にシステム化したのですが、
その中で生まれたのが、冒頭の「上下は一日百戦す」
という言葉です。
■上司と部下は敵対関係である?
この言葉は文字から想像できる通り、
「上司と部下は一日百回(心の中で)戦っている」
というものです。
仕事なので一応の関係はあるけど、
どちらかが弱みを見せたら
いつその関係が終わるかはわからない、というものです。
現代だったらまだ「クビになる」とか、
「上司が部下全員から無視される」
とかその程度で済むでしょう。
しかし、当時は文字通り「命を取られる」時代でした。
その時代の「一日百戦」のプレッシャーは
かなりのものだったでしょう。
韓非子はこの言葉のように「上司と部下は敵対関係である」
と説いているわけですが、本当にそうなのでしょうか。
■「労使の利害は本来相反しない」
この名言を残した人(現代の経営学者)の
名前を忘れてしまった&検索しても出てこないのですが、
この言葉は韓非子とは逆のことを言っています。
正確に引用すると、
「科学的管理法は、次の原則にもとづいている。
すなわち、労使の利害は本来相反しない」
というものです。つまり
「私は科学的に労働者を管理する方法を提唱している。
しかし、この考えは『労働者と使用者は敵対関係』
という意味ではない。
『両者の利害は一致している』という前提に立っている」
という意味です。
少し長くなりましたが、要するにこの人の言ったことは、
韓非子とは逆なわけです。
では、韓非子が間違っていて、
この経営学者が正しいのでしょうか。
実は調べてみると、
韓非子もこの経営学者と似た一言を残しています。
それを次の記事で紹介します。