私がある起業家の方から学んだ言葉の一つに、
「ビジネスは所詮他人事である」というものがあります。
ここではこの言葉の意味を考えます。
音声も撮ったので、聞きながらだと、わかりやすいと思います。
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■顧客の気持ちと完全に一体化などできない
私たちは人間なので、相手の気持ちと完全に一体化することなど、
最初からできません。
家族が相手でもできないですし、友人や恋人が相手でも同じです。
どんなに仕事熱心な人であっても、
顧客の気持ちと完全に一体になるということは無理です。
もしすべての人がそれをしていたら、
世の中には同じ価値観だけが蔓延するということになり、
それはファシズムにもつながってしまいます。
生物学的にいえば、同じ行動を取る個体ばかりになると、
何かの災害や伝染病などの蔓延の時に、
その種は全滅するリスクが高まってしまいます。
なので、私たちが他人の気持ちを完全に理解できないというのは、
実はいいことでもあるのです。
■わからないからこそ、顧客が要求したことを満たす
こうして「気持ちがわからない」からといって、
顧客サービスを怠るというわけではありません。
むしろわからないからこそ、「自分はこうすべきだと思う」
「こうすればお客さんが喜ぶにきまっている」と考えず、
「お客さんが求めているものは何か」を、
ただそれだけを考えることが大事なのです。
いわば、顧客が要求したことを満たすマシンになる、
ということです。言い方が少し誤解を招くかもしれませんが、
これが一番わかりやすい表現だと思います。
■お客さんのニーズの上を行けるのは、経験豊富な人だけ
ジョブズは「顧客は自分が本当に求めるものをわかっていない」
と言いました。そして、誰もが想像していなかった
iPhoneやiPadなどの商品を生み出しました。
なので、ジョブズがいうように、
お客さんの想像をいい意味で裏切るということは
確かに大事なのです。
しかし、それができるのはジョブズのような天才や、
ビジネスの経験が豊富な人だけです。
ほとんどの人はそもそも顧客のニーズをつかめていないし、
掴んでもそれを満たす能力がないのです。
その状態で「顧客は自分が求めるものを…」などと
ジョブズのまね事をしながら言っても、
ただの戯言で終わってしまうでしょう。
私たちはまず謙虚に、顧客が要求していることを
満たすことから始めるべきなのです。
そうして徐々に「顧客の期待をいい意味で裏切る」
こともできるようになるのです。